俺は自分が塾に通ったことなかったから、初めて塾の先生になって仕事が多岐にわたることにびっくりした。
最初にびっくりしたのは、家出した子供を探しに行かされることだった。
家出した子供は塾の生徒ではあるが、家出の原因は俺ではない。
なのにお母さんがカンカンに怒って「もー!先生、また子供が家出しました。早く探しに行ってください!」って言われて、何度探しにいっただろう。
塾の先生ってこんな仕事まであるのか、って驚いたのを覚えている。
生徒を警察に引き取りに行ったり、救急車に乗った子の付き添いで救急車に乗ったり、いろいろあった。
卒塾してからもいっぱいあった。
悪徳商法にひっかかった子の救済。
「先生、今悪徳商法の人に監禁されてるから助けに来て。」
「こんなものを買わされたんだけど。」
今まで何回クーリングオフを教えただろう。
それから借金の肩代わり。
これに関しては、基本的には戻ってこないことが多いし、そのまま音信不通になる場合もある。
当然なのだが、就職時の面接練習とかエントリーシートとかは何回やったかわからない。
そもそも高校を卒業したら塾って終わりのはずだと思うのだが、アフターサービスがいろいろ必要なのね?って生徒に教えられた。
一番びっくりだったのは、卒塾した生徒が親子喧嘩して、神戸の警察から電話がかかってきたことがある。
「警察署で親子が大喧嘩になってるけど、あなたに仲裁に入って欲しいって言うから来て欲しい。」
「おまわりさん、おかしいと思わないのですか?その話は。」
「でも、お母さんがあなたの名前しか言わないので。」
「すみません。5年くらい前に卒塾した子の母親なんですけど。」
山口に住んでる俺にどうしろと言うのか、でも、結局仲裁にはいって大変だったなあ。
そして今、俺はポテト氏と暮らしている。
ポテト氏と言うのはまあ、ハリネズミなのだが、
「先生、事情があって2週間ほど世話をして欲しいんですけど。」
そうかあ、ハリネズミの飼育も塾の先生の仕事なのかあ。はいはい。わかりましたよ。
って、なんかおかしいやろーが。