その場所で隠れて塾をすることはもはやできない。
今まで秘密だった塾がベールを脱いだ瞬間だった。
果たして50坪を満席にすることができのか?
こんなガラガラのだだっ広い場所を、机で埋めることはできるのだろうか?
(満席にしたら軽く50個は机を置けそうだ)
「噂で聞いたんですけど?」
毎日のように電話がなり、体験の生徒が入ってくれた。
入り口には俺がハサミで切って貼った「みかみ塾」の文字。
お金がないので、生徒の最初の月謝で机を購入する。
生徒が来てくれてば、来てくれるほど机が買える。
ホワイトボードのペンは100均で爆買いだ。
近所の100均にあるペンは片っ端から購入していった。
先生は俺と、俺が会社時代に一緒に働いていた後輩をスカウトして2人で教えた。
周藤先生というのだが、今もずっと本部を守り続けてくれている。
俺がいうのもなんだが、ものすごく優秀な男だ。
俺らの授業スタイルは、ペン一本だけで勝負してるから先生の話術や面白さが必要なのだ。
いかに生徒を惹きつけ続けるか?
そしていかに生徒をやる気にさせるか?
徹底的に言葉を選ぶ。
絶対にネガティブな言葉は言わない。
子供を傷つける言葉は発さない。
「できない子は何時まででも付き合います。」
とにかく生徒が欲しい。
誰でもいいから人数が欲しい。
周りのビッグ4に並ぶためにまずは人数が欲しい。
ここで塾特有の問題に直面する。
「あの子が入ってくるんなら塾やめます。」
「あの子は問題児だから、入れない方がいいです。」
そういう話がどんどん入ってくるようになった。
あの子が入ってきたら塾やめるって、無茶じゃないか?
これ、塾の落ち度なのか?
不良と思われている子を入れるかどうかだ(みんないい子なので、実際は不良という言葉は適切ではない)。
不良と思われてる子だって、もしかしたら頑張れるかもしれないし、何よりも人数カウントされる。
とにかくまずは100人を突破しなければいけないし、また、不良の線引きも難しい。
どこかで不良の線を引いたとしても、必ず他の親御さんから「あの子も不良です。」とクレームが入るはず。
それ以上の最大の問題は、塾の場所がアーケード街で、そこはヤンキーや暴走族の溜まり場だったことだ。
塾の始まる夕方の時間はいいのだが、塾の終わる時間になるとバイクが集まってくる。
生徒は帰るときに、バイクの兄ちゃん達の怖い視線の中を通らなければいけない。
これ、どう考えても集客に影響するよね。
絶対にいなくなってもらわないといけない。
朝になると割れた瓶などが散乱している日もあり、こんな治安の悪い場所で授業をすることが、この先許されるはずがない。
朝の仕事が瓶の片付け?
おかしいだろう。
はっきり言おう。
俺は生徒のためには、命をかけようとこの仕事を始めた。
自分のためには死ねないが、生徒を守るためなら喜んで死ねる。
俺は暴走族がたむろするたびに、外に出た。
あとは警察に何度も何度も連絡して、パトロールも強化してもらった。
暴走族からしたら迷惑な話で、俺らの塾がそこにできた瞬間から、面倒臭い金髪のおっさんがいちいちやってくるのだ。
そして警察も頻繁にくる。
直接つかみ合いになりそうになったこともある。
授業中に教室の中に石が投げ込まれたこともある。
でも、絶対に出ていってもらう。
死んでも出ていかせる。
暴走族に出ていってもらわなければ、暴走族の溜まり場を通って行く塾など、あってはならないのだ。
そしてここは、今から県下を制覇する生まれたばかりのみかみ塾なのである。
数ヶ月間の戦いが終わり、アーケード街は平和な勉強街へと変わっていった。
同じアーケード街の他のお店から感謝された。
怖いから逆らえずこんなことになったしまっていたけど、みかみ塾が来てくれてよかったと。
暴走族の集会場所はいつの間にか移動していた。
同じ頃に開塾した県下1位の生徒数を誇る塾がある駅の前に.....
(行ってらっしゃいませ。)
さて、不良と言われている子をどうするか問題について話を戻そう。
俺は勝負に出た。
「ウエルカム。」
ただ、近所に新しく教室を借りて、不良が多い学年はそちらに入ってもらった。
教室に謎の穴があいたり、ちょっと授業のクオリティを下げてしまうことになったが、それなりに体をなしていたように思う。
続かない子が出てきたりして、そのクラスもだんだん普通っぽくなってきた。
それ以外にも月謝を振り込みに変えたり、エアコンを買ったり、法人にしたり、今まで知らなかったことを生徒の親御さんに教えてもらいながら、一つず問題を解決していった。
....そしていつしか俺らの塾は100人を超えた。
ふふふ、待っていた日がやってきたぜ。
ランチェスター戦略の転機だ。
俺はここから一気に戦略を変える。
俺が最初に目指していた、戦略転換の日がやってきた。
塾の関係者は明日のブログをお楽しみにね。
(バリからバイクのヘルメットをかぶって帰る俺)
そろそろ新しいひなまな動画が出る頃です。
前回の動画で記憶をフレッシュにしておきましょう。