近所の4大塾には生徒が100人くらいずついたはずだ。
もちろんだが、正確な数字はわからない。
だが今、俺の塾には生徒が100人いる。
ということは他の塾からの転塾者を考慮すると、俺の塾が一番大きくなっている可能性があった。
だが、俺はこれをよしにするわけにはいかなかった。
県制覇するためには、市制覇なんぞただの通り道。
ゆくゆくは全国1位になるためには予選もいいところなのだ。
俺はミュウツー。
こんなコラッタの戦いは素通りするかのように勝たなければならないのだ。
そして一気にガリバーにならねばならない。
予定通りの戦略転換をした。
いよいよ強者の戦略の始まりだ。
今まで目立たないように目立たないようにしていたのを、目立つように目立つようにへと変えた。
そして他の塾がプリントを使っていると聞けば同じようなプリントを使い、宿題を出すといえば宿題を出す。
他の塾のアドバンテージにミートしていった。
市内ナンバーワンの塾としてミートしているので、他の塾の個性は目立たなくなってしまう。
広告のキャッチフレーズでは「市内最大塾」を謳った。
「うちの塾に来なくて大丈夫ですか?市内のスタンダードなのに。」
車もベンツに変え、髪も茶髪から一気に金髪に。
「誰あれ?」
「塾の先生なのにベンツなの?」
とにかく噂を立てないといけない。
広告は目立つ黄色一色で毎月入れた。
電話が鳴り止まない。
キャッチのキャッチのキャッチ。
電話で授業ができなくなった。
ついた勢いは止まらない。
さらに隣の市へ50坪。
また100坪とどんどん教室を増やしていき、結局2年半で600人にまで生徒が増えた。
中3の夏期講習だけで、大クラスを5クラスも作らないといけなかった。
そして3つの市にまたがって、みかみ塾が認知されることになった。
市内では俺の後にいくつか塾ができたと思うが、地元の中堅以上の大きさになった塾はない。
1教室と2教室を運営する塾では、もはや経営の手法が全然違うし、多教室となるとさらに違うと思うのだ。
自分1人でやるのと、誰かに他を任すこと。
自分のカラーだけで勝負できる戦いと、自分の思想を誰かに託すのでは経営の難しさは5倍くらい違ってくると思う。
1つ目の塾と2つ目の塾では、安定させるための難易度が全然違っていて、3教室、4教室と教室が増えるたびに自分の色が薄れてなく。
何よりも生徒を引きつける求心力が、格段に下がってしまう。
だけど俺らは負けなかった。
大手と全く違う手作り感満載の、いや手作り感しかないやり方で、とにかく生徒に全力を尽くす。
愛を込めてみかみ塾という社名の元に、「迷ったときは、愛を込めてるかどうかで判断してくれ。あとで絶対に文句を言わない。」権限をガンガンに委譲し、仲間と共に塾を大きくしていったのだった。
ところが、この勢いはすぐに止まることになる。
そしてこれ以降、俺らの塾が急成長することはなかった。
その理由は、明日に続くのである。
↑ 春休みに生徒達とバンビエン に行ってみようかと思っている。
皆さんの生徒さん、お子さんもお預かりしましょうか?