みかみの国の王様

お前はお前。俺は俺。

塾立ち上げ編(俺紹介4)

塾を始めることにした。

 

俺の目が見ているものはただ一つ。

 

とりあえず山口県で一番大きい塾を作ること。

 

そのためには、俺が始めた市の中でさっさと1位をとらないといけない。

 

始まった時にきてくれた生徒は10人くらいだった。

 

中3が2人。

 

中2が2人。

 

あとは小学6年生と5年生。

 

 

よし。

 

ここから俺伝説を作る。

 

ランチェスター最弱戦略に則って、そこが塾だと気づかれないようにすべてカーテンをして完全に中が見えないようにした。

 

もちろん、看板などはつけないし、自転車も遠くに止めてもらうようにお願いした。

 

入るときは裏口から入ってもらって、秘密裏に授業を始めた。

 

ちっちゃなぼろっちぃ塾だったが、世界で一番面白くてわかりやすい授業を目指すのだ。

 

 

さて、授業をやる上では差別化が必要だ。

 

どうやって他の塾と違うことをするのか?

 

 

俺は塾に行ったことも、塾で働いたこともない。

 

強いていうなら俺は短期間の独学で、財閥の家庭教師にまでなった男。

 

胸に赤ペンを一本だけ挿して行って、その赤ペンだけで授業する。

 

一切の参考書も問題集も使わない。

 

すべての問題は瞬間自作し、あとはデフォルメした問題で生徒の気持ちを引きつけ続ける。

 

宿題などは一切出さない。

 

今すぐ覚えようというスタイルだった。

 

 

 

塾もそれでいくしかない。

 

生徒にはノートではなく、100均のホワートボードを配布した。

 

書くところがよく見えるためと、書くことを楽しくするためだ。

 

時には「せーのーどんっ!」と言って、ホワイトボードを見せてもらって、珍回答を盛り上げたりした。

 

とにかく面白くて、分かったと言ってもらえる授業にすること。

 

もうそれだけだ。

 

毎日授業の感想は必ず親御さんに届いているはず。

 

すべての親御さんに、子供達が笑顔で感想を言えるように。

 

「今日も楽しかったよ。」と。

 

1クラスあたりの人数も次第に増えていき、8人を同時に授業できるようになったときには感動した。

 

そして8人が同時に座ると狭すぎて、トイレに行けなくなることがわかった。

 

 

 

噂が立ち始めた。

 

塾の外にいると、どこかのお母さんが塾の中を覗こうとしている。

 

「この辺に塾があるって聞いたんですけど、ご存知ですか?」

 

「塾?この辺に塾はないですよ。」

 

 

最弱者戦略は目立たないことなのだ。

 

無人の隙間地域でまずは1位を確定させること。

 

目立っていいのは噂だけ。

 

だけど、どんな授業しているのか?

 

誰が教えているのか?

 

誰からもマークされないように、徹底的に隠れ続けた。

 

隠れることで、どんどん目立っていく。

 

あとは生徒の親御さんにものすごく力を持っている親御さんがいらっしゃり、たくさんの生徒を紹介してくださった。

 

あっという間に、授業ができない日が来て、引越しを決めた。

 

それが12月だった。

 

最初の引越しまではわずか4ヶ月かからなかった。

 

 

 

 

次の引越しはめちゃめちゃリスキーだった。

 

場所が悪すぎる。

 

当時の4大塾が集まっていた場所の真ん中だ。

 

その市(今はもう統合されてなくなった)は、県内で最も小さい市だったため、100人規模の塾が一番大きい塾で合計で4つ存在していた。

 

さらには俺の塾が出来た時と、ほぼ同じタイミングで県内最大の塾がその市にも誕生していた。

 

俺のシナリオでは、ここで一気に100人にしとく作戦だったので、その最悪の場所を譲ることはできなかった。

 

お客さんは周りの塾から、転塾してくれるのだ。

 

今ある塾の近くに俺の塾があること。

 

ただし、もろ刃の剣の立地で、せっかく俺が作った塾も一瞬で木っ端微塵になる可能性もあった。

 

 

 

お金がなかったので、ボロボロの教室でエアコンもない。

 

ひび割れたコンクリートむき出しの床からは、冷気が上がってくる。

 

50坪ワンフロアーに8個だけ机がある。

 

まだ、俺は8個しか机を持っていなかった。

 

引越しは生徒と一緒にすべて手で運び、俺のお金は敷金に消えた。

 

こんなにガラガラで、こんな廃墟みたいなところでやっていけるのだろうか?

 

 

親御さんが自分の家のストーブを持ってきてくださった。

 

5個くらいのストーブを輪のように並べ、寂しい気持ちにならないように、スルメを焼きながら授業した。

 

授業が終わったらみんなで焼けたスルメやら芋やらを食った。

 

俺にあるのは情熱だけ。

 

365日無休で、夜中3時くらいまで塾にいる生活が続いた。

 

 

 

だが、予期せぬトラブルはたくさんあった。

 

続く

 

 

 

 

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