生徒はすでに600人。
定員で募集ストップしてからの、モチベーションが下がってしまった。
なぜなら、とりあえず県下ナンバー1の塾を作ることを目指していたので、県下ナンバー1への道が絶たれた今、何をガソリンにしていいのかわからない。
勢いが止まった塾に慣れていなかったこともある。
これでいいのか?と言う不安感がずっとあった。
そんなときに、中3のあいこちゃんのお母さんが塾に見えた。
「先生、お兄ちゃんみてもらえないですか?」
「お兄ちゃん?お兄ちゃんって双子ですか?」
「高校3年生なんですけど、化学の方を.....」
「すみません。高校生はやらないんですよ。」
俺が塾をやってる理由の一つに子供好きだということが挙げられる。
中学生とばっかり授業をしていると、高校生が大人に見えてしまう。
大人はちょっとね...
「先生じゃないと頼めないんですよ。」
「他の塾があるじゃないですか?他の塾で習われたらいかがですか?僕は高校生やってないんですよ。」
「先生、東大受けたいんですが、化学だけが苦手なんです。」
「......東大?」
まあ、そうなってくると話はちょっと別なわけで、俺は15歳から化学をやりまくってるし、大学受験の時の偏差値もすごかったし、そもそも化学で生きてきた男なので、それなら仕方ねえなあってことで、受けることにした。
「でも、23時以降じゃないと空いてませんよ。」
そしてだいすけくんと勉強するようになって、次の模擬試験でだいすけくんが県で1位をとった。
その時の俺は、それくらいは当然だと本当に考えていた。
「さすが先生ですね。」
「ああ、そうですね。」おわり。
さっさと東大に合格してもらって終わりにしようと思っていたら、だいすけくんがごうくんを連れてきた。
「ちょい、なんで友達連れてくるの?」
「いや、化学がよくわかるって話したら行ってみたいって....」
友達なんか連れてこなくていいのに。
授業を終えたごうくんは、その日喜んで帰って行った。
次の週にまほこちゃんが来た。
「ちょい。増やさんで!」
めっちゃやりにくい布陣だった。
理数科のだいすけくん、理系のごうくん、文系のまほこちゃん。
あー、やりにくー。
なんのモチベーションもなかったが、俺は化学が出来すぎるので、俺のやり方を説明するだけで十分だった。
本も参考書も必要ない。
ペン一本で授業をした。
そして、学校の定期テストを迎えた。
適当にテスト対策して、「はい。みなさん明日は頑張って。」と送り出した。
まあできて当然。
俺が教えてるわけだし。
そしてテストが返ってきた。
なんと、理数科のだいすけくん、理系のごうくん、文系のまほこちゃん。
3人ともそれぞれの科で化学が1位だったのだ。
さすがにこれはびっくりした。
ローカルの戦いの中学生をやるよりは全国区の大学受験化学をやった方が、成功確率が高いのではないかと考えるようになった。
センターの平均点は、全国の受験生で比較することができるのだから。
これ当たったら全国区じゃね?
そうと決まったら、大好きな子供(中学生)との勉強を捨てて、お金の匂いを感じる高校生へとシフトだ。
クンクン なんだかいい匂い。
俺は新しいブランド「みかみ塾2(ツー)」を立ち上げて、高校生の化学を教えるようになった。
同時に、中学生とはお別れを決断した。
翌年、口コミがすごくて生徒がものすごく入ってきた。
地元最難関の徳山高校の全生徒数の3分の1近い生徒が、塾にきてくれるようになり、同じ授業を月火水木金とやった。
入塾は好きな曜日に入ってください。という感じだった。
その年から、徳山高校がセンター試験の化学で県下トップに立つようになった。
こんなにすごいんなら、俺、本が書けるんじゃね?
本って、どうやって書くのか知ってる?
この勢いの俺がどうやって本を出すようになったのか、次回に書いてみようと思う。
明日の朝、クアラルンプール編が出る予定。
ボルネオを思い出しておこう。