みかみの国の王様

お前はお前。俺は俺。

夏のデッサン

みかみ先生って、結婚してるのだろうか?

 

子供はいるのだろうか?

 

疑問に思ってた人が多いと思う。

 

 

 

俺はこの仕事を始めるにあたって、「自分の子供を通わせたい塾だけは絶対に作らない。」と決めていた。

 

俺が俺の子供のために作った塾に、他の家の大事な子供さんがどうして通わないといけないのだろうか?

 

俺は「あなたの大事な子供さんを俺の子供だと思って、大切に育てます。」という思いで塾を作った。

 

俺はあなたの大切な子供さんのための塾を作ったのだ。

 

だから、家のカラーを完全に消して仕事を始めた。

 

「俺はみんなのお父さんです。」

 

みんなのことが可愛くて仕方がなかった。

 

 

今は母子家庭の家もたくさんある。

 

塾にいるのが君のお父さんだ。

 

ところがある日、事件が起きた。

 

平日の午前中だからと油断をしてしまったのがいけなかった。

 

母子家庭のよく懐いてくれてた生徒が、たまたま遊びに来た俺の娘(小学低学年)を見て、失踪してしまったのだ。

 

警察も動員して、ちょっと騒ぎになってしまった。

 

結局、その日の夜中、お父さんのお墓の前で泣いているその子が見つかった。

 

自分が初めに作ったコンセプトに対してプロになりきれていなかったことを深く悔やんだ。

 

もっと家庭の雰囲気を消さなければいけなかった。

 

 

さて、話をもどそう。

 

10代の終わりに一目惚れした人がいた。

 

こんな綺麗な人はきっと一生現れない。

 

今、結婚するしかないと思った。

 

だけど俺は高卒だ。

 

自分で自分のことを最高とは思うことができなかった。

 

そしてその人の生活を、一生保障できるのか、少しだけ自信がなかった。

 

そんな自分を変えないと、綺麗な彼女とはきっと釣り合わないはず。

 

彼女に「結婚する前に大学卒になるチケットを手に入れてくる。」といい、一人で受験勉強を始めた。

 

それはそれは苦しい受験勉強だったが、合格したら結婚しようと話していた。

 

ただの1度もデートをすることなく、2年間勉強し続けて大学に合格した。

 

「よし、結婚」と思ったのだが、会社から「1年間は期間をあけるように(でないと結婚するために勉強したみたいで心象が悪い)」と言われた俺は大学1年生の3月まで待って結婚式を挙げた。

 

大学生でお金もなかったから、結婚式もみんなのご祝儀で払うからと後払いさせてもらった。

 

だから大学生の時は2人暮らし。

 

大学院になって娘ができて3人暮らしになった。

 

最初、お金は全然なかったが問題なかった。

 

俺を捨てた両親のようには、俺は絶対にならない。

 

 

その後、娘が福岡の高校に進学した時に、家族で福岡に引っ越した。

 

最初は福岡から山口に通っていたのだが、いくらなんでも大変すぎるので単身赴任に切り替えた。

 

そしてなぜか11年目を迎えていた。

 

ハニーはコストコ福岡が大好きだったのだ。

 

 

先日、ハニーが「そろそろ徳山に戻ろうと思うんだけど。」

 

唐突に俺に話をしてきた。

 

どういうタイミングで、何が起きたのかは全然わからないのだが、

 

 

「もちろん、おかえり。」

 

そう答えた。

 

 

 

結婚して約20年間一緒に暮らして、その後11年間単身赴任。

 

その生活が今日で終わって、明日からはまたハニーと二人暮らしになる。

 

「毎日ガラスケースに入っててくれたら、もうなにもしなくていいから、せめて毎日俺に鑑賞させて欲しい。」

 

そう思って結婚してもらった、あの日の俺の気持ちがずっと残っている。

 

さすがに大喧嘩することはもうないが、些細なことで言い過ぎてしまうこともある。

 

だけど、まだこの先20年くらいあるから、今から一番幸せな奥さんにできるように努力したい。

 

もはや俺の年齢で、生徒が俺のことをお父さんと思う人も少ないだろう、おじいちゃんならいいかってことでオープンにしてみた。

 

生徒はみんな、俺の子供じゃなくて孫になるのでよろしくね。

 

 

明日からはハニーが戻ってくるので、俺の食生活も著しく改善されると思う(ハニーは料理がすごくうまいので)。

 

 

ハニーが戻ってくる前にケーキでも買ってこよう。

 

夜は、「これから何を一緒にしようか。」を話そうと思っている。