俺は50年以上包丁というものを持ったことがなかった。
小学の家庭科のときでさえ包丁を持たず、じゃがいもを皮剥き器で剥いたくらいだ。
とにかく俺は死ぬまで自炊は絶対にしないと決めていた。
ある時までだ。
忘れもしない。
今年の正月のことである。
一瞬であるが、親戚の会合に参加した。
するとデリカシーのない双子の弟が、この高潔の俺様に向かって「なに、このクソデブ。」とか、「お前、人間?」とか、連呼してきたのだ。
殴り殺したいほどの怒りが込み上げてきた。
俺だって弟にはいろいろ悪口を言うことはできたのだが、大人なのでもう言っていいことと悪いことがあるのだ。
本気で口喧嘩して相手の弱点をつくこともできるし、その術も持っていると思う。
でも、弱いものいじめはできないのである。
何度も書くが俺はもはや何も困っていない。
さらに、俺はデブだが誰にも迷惑をかけていないのだ。
だが、そのときに生み出された憎悪の気持ちは、すぐさま俺を近所のホームセンターに向かわせた。
包丁などを一気に買い揃え、今のような生活になったというわけなのだ。
ただ、これが逆にすごくよかったと思っている(弟への恨みは消えてはいないが)。
俺は元々、野菜が大好きで外食でも好んで野菜を食べていた。
ただ、意外に野菜を選択的に食うことは難しいために、どうしても炭水化物過多の食生活を送らざるを得なかった。
ところが、自分で野菜をスーパーで買うようになると選択的に野菜を食うことができるようになったのだ。
1日に2食とも自炊は飽きるので、なるべく1食を自炊、もう1食を外食にしている。
あっ、ちなみに朝飯はコーヒーだけね。
その後、体重は順調に下がり続け、娘の結婚式のときにピークを迎えた。
現在はコロナにより、運動不足の日々が続き、体重は正月のクソデブだった日に戻ってしまった。
ただ、今日もこんなにきれいな色の白菜を茹でられて感謝だ。
ちねみに下に肉と椎茸も入っている。
ま、それでも弟は許していない.....