みかみの国の王様

お前はお前。俺は俺。

遠石八幡宮

数年前に太宰府天満宮のすぐ近くに住んでいた。

 

正月になると、ものすごい人が押し寄せてくるので家に帰るのが大変だった。

 

何キロもの車の行列ができるからだ。

 

近所の人は裏道をたくさん知っているが、それでも細い道に車が殺到するために、家に帰るのが大変なことになってしまう。

 

 

でも、俺は山口県にある家の近所の遠石八幡様を一番信じている。

 

理由は二つだ。

 

大学受験の時に、いろいろなお守りをもらって大事にしていたのだが、結局不合格になってしまった。

 

その翌年は遠石八幡様のお守りだけ持って、「俺が勉強するので、みてくださるだけでいいです。」っていうスタンスで合格することができた。

 

 

もう一つは大学院の2年生のときだ。

 

当時の教授が嫌いすぎて(生きてきた中で一番嫌いなやつだった)、もはや大学を続ける気になれなかった。

 

これほど利己的な人間が存在してもいいものだろうか?と暗殺する方法を本気で毎日考えていた。

 

確か卒業式まで1ヶ月もなかったと思う。

 

でも、どうしてもこいつから学位をもらう気になれない。

 

大学を辞めることは俺にとっては簡単ではなかった。

 

なぜなら、会社のお金で大学に行かせてもらっていたから。

 

途中で大学をやめると、給料と授業料合わせて合計2000万円を返金しないといけなかった。

 

当時の俺にそんな金などあるはずもなく、大学をやめるカードを切ることが絶対にできなかった。

 

でも、俺は本当に限界だったので、大学院を辞めることを決めた。

 

 

 

最後に大学受験でお世話になった遠石八幡様でお祓いしてもらおう。

 

もしもこれでも何か変わらなければ、会社に謝ってローンで返金させてもらおう。

 

とりあえず大学卒の学位だけは手にすることはできたし。

 

俺は大学を無断で休んだ。

 

 

 

 

情けない話だった。

 

パパは負けてしまったのだ。

 

1歳の子供抱っこし、家族3人で地元に戻り遠石八幡様に行った。

 

 「お祓いをお願いしたいのですが....」

 

もう俺は極限まで弱っていた。

 

お祓いは初めての経験で何をすればいいのか全くわからなかったが、もはや神の力がないと再生できなかった。

 

妻と赤ちゃんを車に残し、俺は拝殿に入っていった。

 

 

荘厳な部屋の中、神主様が入ってこられた。

 

祝詞(のりと)の中で、俺の住所、名前、そして俺の状況を救済してくださるようにと神に祈られた。

 

俺を助けてくださる...

 

何も考えることも、作戦を立てることもできなかった。

 

焦燥の極みだった。

 

涙しか出てこない。

 

最後に神主様が、これで「好転するといいですね。」というようなことをおっしゃった。

 

車に戻って、情けないことに家族の前で泣いてしまった。

 

神主様に優しくされただけでも俺は嬉しかった。

 

 

次の日の朝、俺は神様に守られていた。

 

朝一番に散髪屋さんに行って、頭を丸坊主にした。

 

そして大学に戻り、教授に「昨日は休んですみませんでした。そして今まで生意気ですみませんでした。」と帽子をとって謝った。

 

俺の頭を見て、教授はわかったんだと思う。

 

それからは意地悪がなくなった。

 

俺も教授に逆らうのをやめた。

 

 

 

だから俺は卒業式は坊主頭だった。

 

卒業式にきた、祖父母も「なんでそんな変な頭して。」って言ってきた。

 

 

でも、遠石八幡様のおかげで俺は今の俺がある。

 

 

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塾の先生になってから、毎年、遠石八幡様に何枚かの絵馬を書きに行っている。

 

今年も正月にきちんと書いておいた。

 

自分の名前も書いてないけど、神様ならわかってくれると思う。

 

 

センター試験まであと3日。

 

俺の子供たち。

 

みんながんばれ。