みかみの国の王様

お前はお前。俺は俺。

本の書き方(俺紹介9)

本書いてる人いるじゃん?

 

あれってどうやって書いてると思う?

 

 

 

 

.....実は俺も知らない。

 

じゃあ、俺の場合はどうやって書くようになったか?

 

参考にならないと思うけど教えてやろう。

 

 

 

ブログで「誰か本の書き方教えて?」あるいは「出版社紹介して。」って書いたことがあったんだよ。

 

そしたら「出版金の卵コンテストってのがありますよ?」って教えてもらって。

 

 

金の卵コンテストー?

 

俺、コンテストとか得意やんけ。

 

みたいな感じで、応募してみた。

 

その時にA4用紙1枚程度の企画書と本文数ページ分ってのが、申し込み書類だったんだけど、企画書って書いたことないじゃん。

 

書き方はもちろんわからなかったんだけど、どんな本を書こうかなーってことになったわけ。

 

まあ、当たり前だけど、普通に本書いても仕方ないじゃん。

 

だって誰も俺のことを知らないんだから。

 

 

そこで俺の化学を分析した。

 

俺のテストへのこだわりは問題を解くスピードにあるんだよ。

 

とにかく速く解きたい。

 

誰よりも速く、日本最高速度ギネス記録で100点取りたい。

 

世の中に30日で完成とか、2週間で完成とかいう参考書は数多あるが、20分で解くというコンセプトの本はない。

 

よし、俺の参考書は問題を速く解くという切り口で書こう。

 

早く勉強できるのはなく速く解くだ。

 

 

あとはネーミングだ。

 

ここがきっと一番重要だ。

 

もはやネーミングで半分くらいきまるはず。

 

誰も俺のことを知らないのだから。

 

 

速い化学、できちゃう化学、裏技化学......

 

 

 

 

 

 

 

ヒキョーな化学⁉︎

 

 

おっ、これだ。

 

これでいこう。

 

 

そして企画書というものを、なんとなくで書き上げて俺は送った。

 

 

そこで1位になったら、そのまますぐに商業出版されるらしい。

 

よしよしよし。

 

 

発表と表彰式は横浜ランドマークタワーで行われる。

 

これは行かなければ...

 

俺様の勇姿をみんなに見せつける必要がある。

 

 

初めておろす俺の勝負服と、いつもより鮮やかな金髪。

 

背広のサラリーマンみたいなやつばかりの中に異彩を放つ俺がいた。

 

「おいおい、お前ら、できるやつは見た目から違うんだからさ。」

 

100人くらいがいただろうか。

 

熱心にみんなが名刺の交換をしている。

 

悪いけど俺は全く興味がない。

 

金の卵とは俺様のこと。

 

最初から俺を見出すためのコンテストなのだ。

 

他のやつには用事がない。

 

 

表彰式が始まった。

 

3位から発表されるらしい。

 

3位?

 

おいおい、俺の名前呼ぶなよ?

 

俺は祈った。

 

「発表は......○○さんです!」

 

よかったあああ。

 

こんなところで呼ばれたら、困るからね。

 

しかも..プププ...3位の人喜んじゃってる。

 

「今回は3位の作品も出版したいという出版社があったので、出版とさせていただきます。」

 

....笑。

 

3位で出版とか嬉しい?

 

本屋に3位で出版ってpop書くの?

 

 

「さあ、2位の発表です。」

 

勝負はここだ。

 

ここで呼ばれなければいい。

 

大島優子と言ってくれ。

 

前田敦子は1位でしか呼ばれない。

 

「.......○○さんです!」

 

 

 

勝った。

 

俺は勝利した。

 

金の卵で生まれてきた俺は、金の卵として生きていくのだよ。

 

2位のあなたおめでとう。

 

心からお祝いさせてもらうし、あなたがいなければ俺もいない。

 

 

 

そして、1位の発表。

 

俺は登場の仕方、賞状のもらい方、インタビュー、瞬時にシナリオを考えた。

 

そして

 

「1位、ヒキョーな化学、みかみさんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ってのに備えてたのに、違う人が呼ばれてしまった。

 

 

 

あのさ.....

 

言っていいかな。

 

俺1位ばっかりだったから、1位以外の振る舞いに慣れていないのだよ。

 

俺の上に24時間照りつけているはずの王者の太陽は何処に?

 

俺が3位の中にさえ入れないって、名前書いてましたっけ?

 

こんなに目立つ格好でいるのに、これじゃあ「痛い人間コンテスト1位」になってるざます。

 

俺は恥ずかしかった。

 

もはや、俺を支える筋肉も骨も軟化していた。

 

細胞壁が欲しい。

 

俺を支える細胞壁が.....

 

 

 

茫然自失の俺は、1人静かに会場を後にした。

 

1位の人がインタビューされている。

 

そして審査委員長が何か言っている。

 

「えー、今回は素晴らしい作品に恵まれて大成功でした。ですが、1人だけ申し訳ないのですが、選外とさせていただきました。本日は小説等のコンテストなのですが、参考書を出された方がいらっしゃいまして......」

 

 

え?

 

参考書出しちゃあいけなかったの?

 

 

おっちゃんよぉ〜。

 

真っ白によぉ。

 

俺は真っ白に燃え尽きちまったぜ。

 

 

 

塾に戻ると他の先生たちが待っていた。

 

俺の出版を祝ってくれるためだ。

 

「やー、なんか小説のコンテストだったみたいで....」

 

「あっ、そうなんですね。」

 

みんなが笑顔で気を使ってくれる。

 

「マジで本当だって。」

 

みんなは俺が負けていないことを信じてくれていなかった。

 

俺は負ける以前に、審査員の目にさえたどり着いていなかったんだったって。

 

 

 

 

そして次の日、ある出版社から電話がかかってきた。

 

「なんか、金の卵に間違って出したんでしょ?ウチから出しませんか?」と。

 

 

トントン拍子で話が進み、あっという間に俺の本が書店に並んだ。

 

1週間後に増刷がかかり、また増刷の連続で、その年の化学の参考書の売り上げ部数日本1位になった。

 

 

 

 

 

.....やっぱり俺って本物だな。

 

というわけで俺の全国展開が始まるのであった。

 

いつかに続く。