本書いてる人いるじゃん?
あれってどうやって書いてると思う?
.....実は俺も知らない。
じゃあ、俺の場合はどうやって書くようになったか?
参考にならないと思うけど教えてやろう。
ブログで「誰か本の書き方教えて?」あるいは「出版社紹介して。」って書いたことがあったんだよ。
そしたら「出版金の卵コンテストってのがありますよ?」って教えてもらって。
金の卵コンテストー?
俺、コンテストとか得意やんけ。
みたいな感じで、応募してみた。
その時にA4用紙1枚程度の企画書と本文数ページ分ってのが、申し込み書類だったんだけど、企画書って書いたことないじゃん。
書き方はもちろんわからなかったんだけど、どんな本を書こうかなーってことになったわけ。
まあ、当たり前だけど、普通に本書いても仕方ないじゃん。
だって誰も俺のことを知らないんだから。
そこで俺の化学を分析した。
俺のテストへのこだわりは問題を解くスピードにあるんだよ。
とにかく速く解きたい。
誰よりも速く、日本最高速度ギネス記録で100点取りたい。
世の中に30日で完成とか、2週間で完成とかいう参考書は数多あるが、20分で解くというコンセプトの本はない。
よし、俺の参考書は問題を速く解くという切り口で書こう。
早く勉強できるのはなく速く解くだ。
あとはネーミングだ。
ここがきっと一番重要だ。
もはやネーミングで半分くらいきまるはず。
誰も俺のことを知らないのだから。
速い化学、できちゃう化学、裏技化学......
ヒキョーな化学⁉︎
おっ、これだ。
これでいこう。
そして企画書というものを、なんとなくで書き上げて俺は送った。
そこで1位になったら、そのまますぐに商業出版されるらしい。
よしよしよし。
発表と表彰式は横浜ランドマークタワーで行われる。
これは行かなければ...
俺様の勇姿をみんなに見せつける必要がある。
初めておろす俺の勝負服と、いつもより鮮やかな金髪。
背広のサラリーマンみたいなやつばかりの中に異彩を放つ俺がいた。
「おいおい、お前ら、できるやつは見た目から違うんだからさ。」
100人くらいがいただろうか。
熱心にみんなが名刺の交換をしている。
悪いけど俺は全く興味がない。
金の卵とは俺様のこと。
最初から俺を見出すためのコンテストなのだ。
他のやつには用事がない。
表彰式が始まった。
3位から発表されるらしい。
3位?
おいおい、俺の名前呼ぶなよ?
俺は祈った。
「発表は......○○さんです!」
よかったあああ。
こんなところで呼ばれたら、困るからね。
しかも..プププ...3位の人喜んじゃってる。
「今回は3位の作品も出版したいという出版社があったので、出版とさせていただきます。」
....笑。
3位で出版とか嬉しい?
本屋に3位で出版ってpop書くの?
「さあ、2位の発表です。」
勝負はここだ。
ここで呼ばれなければいい。
大島優子と言ってくれ。
前田敦子は1位でしか呼ばれない。
「.......○○さんです!」
勝った。
俺は勝利した。
金の卵で生まれてきた俺は、金の卵として生きていくのだよ。
2位のあなたおめでとう。
心からお祝いさせてもらうし、あなたがいなければ俺もいない。
そして、1位の発表。
俺は登場の仕方、賞状のもらい方、インタビュー、瞬時にシナリオを考えた。
そして
「1位、ヒキョーな化学、みかみさんです!」
ってのに備えてたのに、違う人が呼ばれてしまった。
あのさ.....
言っていいかな。
俺1位ばっかりだったから、1位以外の振る舞いに慣れていないのだよ。
俺の上に24時間照りつけているはずの王者の太陽は何処に?
俺が3位の中にさえ入れないって、名前書いてましたっけ?
こんなに目立つ格好でいるのに、これじゃあ「痛い人間コンテスト1位」になってるざます。
俺は恥ずかしかった。
もはや、俺を支える筋肉も骨も軟化していた。
細胞壁が欲しい。
俺を支える細胞壁が.....
茫然自失の俺は、1人静かに会場を後にした。
1位の人がインタビューされている。
そして審査委員長が何か言っている。
「えー、今回は素晴らしい作品に恵まれて大成功でした。ですが、1人だけ申し訳ないのですが、選外とさせていただきました。本日は小説等のコンテストなのですが、参考書を出された方がいらっしゃいまして......」
え?
参考書出しちゃあいけなかったの?
おっちゃんよぉ〜。
真っ白によぉ。
俺は真っ白に燃え尽きちまったぜ。
塾に戻ると他の先生たちが待っていた。
俺の出版を祝ってくれるためだ。
「やー、なんか小説のコンテストだったみたいで....」
「あっ、そうなんですね。」
みんなが笑顔で気を使ってくれる。
「マジで本当だって。」
みんなは俺が負けていないことを信じてくれていなかった。
俺は負ける以前に、審査員の目にさえたどり着いていなかったんだったって。
そして次の日、ある出版社から電話がかかってきた。
「なんか、金の卵に間違って出したんでしょ?ウチから出しませんか?」と。
トントン拍子で話が進み、あっという間に俺の本が書店に並んだ。
1週間後に増刷がかかり、また増刷の連続で、その年の化学の参考書の売り上げ部数日本1位になった。
.....やっぱり俺って本物だな。
というわけで俺の全国展開が始まるのであった。
いつかに続く。